
戸籍謄本を請求しようとして申請書を見ると、「本籍」と「筆頭者」を記入する欄があります。ところが、「本籍は今住んでいる住所と同じなのか」「筆頭者とは世帯主のことなのか」「結婚したら誰が筆頭者になるのか」と迷う方も少なくありません。
本籍は戸籍上の所在地を示すもので、現在生活している住所とは別の制度です。また、筆頭者は住民票の「世帯主」と同じ意味ではなく、その戸籍を表示するための基準となる人です。
本籍や筆頭者がわからない場合でも、本籍・筆頭者を記載した住民票の写しを取得するなどして確認できる場合があります。この記事では、本籍地と住所の違い、筆頭者の意味、調べ方、婚姻や引っ越しとの関係、戸籍を取り寄せる場合のポイントを行政書士が解説します。
目次
本籍地とは何か
本籍とは、簡単にいうと自分の戸籍が置かれている場所です。
法務省の戸籍制度に関する資料では、本籍について「人の戸籍上の所在場所」と説明されています。本籍は現在生活している場所を示す住所とは異なり、戸籍を特定し、その戸籍をどの市区町村が管理するかを判断するための基準となります。
戸籍法第6条
戸籍法第6条は、戸籍について「市町村の区域内に本籍を定める一の夫婦及びこれと氏を同じくする子ごと」に編製すると定めています。
本籍は単なる郵送先や現住所ではなく、その人が入っている戸籍の所在を示す基本事項です。
例えば、現在は大阪府に住んでいても、本籍が奈良県や東京都にあるということは珍しくありません。引っ越しただけでは本籍は自動的に変更されないためです。
本籍と住所の違い
| 項目 | 本籍 | 住所 |
|---|---|---|
| 意味 | 戸籍上の所在地 | 現実の生活の本拠 |
| 主に記録されるもの | 戸籍 | 住民票 |
| 引っ越した場合 | 原則として自動では変わらない | 転入・転居等の届出により変更 |
| 戸籍請求との関係 | 戸籍を特定する重要事項 | 請求者の本人確認や送付先等で使用 |
例えば、「奈良県生駒市に住んでいるが、本籍は大阪市」という状態もあり得ます。この場合、住所を生駒市へ移しても、本籍を変更する転籍届などを行わない限り、本籍はそのままです。
本籍=実家の住所とは限りません
本籍について「実家の住所」「出生した場所」「現在住んでいる家の住所」と理解している方もいますが、必ずしも一致しません。戸籍を請求するときは、記憶だけで判断せず正確な本籍を確認することが大切です。
戸籍の筆頭者とは
筆頭者とは、文字どおり戸籍の最初に記載される人です。
ただし、筆頭者は単に「家族の代表者」という意味ではありません。戸籍法では、本籍と筆頭者の氏名を組み合わせて戸籍を表示する仕組みになっています。
戸籍法第9条
戸籍法第9条は、「戸籍は、その筆頭に記載した者の氏名及び本籍でこれを表示する」と定めています。
筆頭者は、その戸籍を検索・特定するための重要な情報です。また、筆頭者が死亡などによって戸籍から除かれた後も、その戸籍の筆頭者が別の家族へ自動的に変更されるわけではありません。
筆頭者と世帯主は別のもの
筆頭者と混同されやすいものに、住民票の「世帯主」があります。
筆頭者は戸籍上の概念ですが、世帯主は住民票上の世帯に関する概念です。そのため、同じ家族であっても戸籍の筆頭者と住民票の世帯主が異なることがあります。
例えば、戸籍の筆頭者が夫であっても、生活状況によって住民票上の世帯主を妻としている場合があります。反対に、筆頭者本人が死亡していても、戸籍の表示上はその人が筆頭者として残る場合があります。
結婚すると筆頭者はどうなる?
婚姻すると、多くの場合、夫婦について新しい戸籍が作られます。
一般的には、婚姻時に夫の氏を選択した場合は夫が、妻の氏を選択した場合は妻が、新しく編製される戸籍の筆頭者となります。ただし、婚姻前から一方が戸籍の筆頭者である場合など、事情によって新戸籍を作らず既存の戸籍へ配偶者が入るケースもあります。
戸籍法第16条
戸籍法第16条は、婚姻の届出があった場合、原則として夫婦について新戸籍を編製することを定めています。
ただし、夫の氏を称する場合に夫がすでに戸籍の筆頭者であるとき、または妻の氏を称する場合に妻がすでに筆頭者であるときなどは、新戸籍を編製せず配偶者がその戸籍へ入る仕組みとなっています。
なお、「夫だから必ず筆頭者になる」「男性が世帯主だから戸籍の筆頭者になる」という制度ではありません。婚姻時にどちらの氏を称するかや、婚姻前の戸籍状況などによって決まります。
本籍・筆頭者がわからない場合の調べ方
戸籍謄本を請求する際、本籍と筆頭者の記入を求められることがあります。しかし、普段の生活で本籍を使う機会は多くないため、「都道府県までは覚えているが番地がわからない」ということもあります。
本籍・筆頭者を記載した住民票を取得する
現在の住所地の市区町村で住民票の写しを請求する際、日本人については本籍と筆頭者を記載した住民票を取得できる場合があります。
通常の住民票では本籍・筆頭者が省略されていることがあるため、窓口や申請画面で「本籍・筆頭者を記載する」旨を指定することがポイントです。
自治体がコンビニ交付に対応している場合は、マイナンバーカードを利用した住民票取得時に、本籍・筆頭者の記載を選択できることもあります。対応状況や操作方法は住所地の自治体で確認してください。
戸籍請求の前に正確な本籍を確認
「おそらくこの住所だった」と推測して戸籍を郵送請求すると、該当戸籍を特定できず、自治体から確認を求められることがあります。本籍が曖昧な場合は、本籍・筆頭者記載の住民票等で確認してから請求する方がスムーズです。
以前取得した戸籍謄本を確認する
手元に戸籍謄本や戸籍全部事項証明書が残っている場合、その書面の本籍・筆頭者欄から確認できます。
ただし、その後に転籍や婚姻などがあれば現在の本籍と異なっていることがあります。現在の戸籍が必要な場合は、古い証明書だけで判断しないよう注意してください。
家族に確認する
同じ戸籍に在籍している家族が本籍を把握している場合は確認できます。ただし、本籍の地番まで正確に覚えていないケースも多いため、戸籍の郵送請求など正式な手続で使用する場合は公的な証明書で確認すると安心です。
引っ越すと本籍も変わる?
引っ越しをして住所を変更しても、本籍が自動的に新住所へ変更されるわけではありません。
住所と本籍は別々に管理されているためです。本籍を変更する場合には「転籍」という戸籍上の手続を行います。
戸籍法第108条
戸籍法第108条では、転籍をしようとする場合、新しい本籍を届書に記載し、戸籍の筆頭者とその配偶者が届け出ることが定められています。
つまり、住所変更をしただけで戸籍の本籍が移動するのではなく、本籍を変更するには別途、転籍の届出が必要です。
そのため、長年同じ市に住んでいても本籍が遠方の自治体に残っている方もいます。相続で出生から死亡までの戸籍を集める場合には、このような転籍の履歴をたどることがあります。
本籍がわかった後に戸籍を請求する方法
本籍と筆頭者が確認できれば、必要な戸籍の種類を確認して請求します。
現在の戸籍全部事項証明書だけで足りる場合もあれば、相続手続のように、除籍謄本や改製原戸籍まで必要になる場合もあります。
| 方法 | 特徴 |
|---|---|
| 本籍地の市区町村窓口 | 基本的な取得方法 |
| 郵送 | 遠方の本籍地へ請求するときに利用しやすい |
| コンビニ交付 | 本籍地自治体の対応状況や利用条件による |
| 広域交付 | 一定の戸籍・除籍について本籍地以外の市区町村窓口でも請求可能 |
2024年3月1日から始まった広域交付制度により、本人、配偶者、直系尊属、直系卑属など一定の方は、本籍地以外の市区町村窓口で対象となる戸籍証明書等を請求できるようになりました。
一方、広域交付は郵送や代理人による請求には利用できず、一部の戸籍証明書は対象外です。取得方法を選ぶ際は、必要な戸籍の種類と請求者の立場を確認する必要があります。
戸籍取り寄せを行政書士へ依頼する場合
本籍地が遠方にある場合や、相続で複数の本籍地をたどらなければならない場合には、戸籍収集に時間と手間がかかります。
当サービスでは、ご依頼者に代わって戸籍、除籍、改製原戸籍、戸籍の附票等を取得する戸籍取り寄せ代行を行っています。
特に相続では、最後の本籍地から戸籍を取得し、記載されている従前戸籍を確認してさらに前の自治体へ請求する、という作業を繰り返すことがあります。転籍が多い方や古い戸籍が複数ある場合は、収集先が複数の自治体にまたがることもあります。
ただし、第三者の戸籍については誰でも取得できるわけではありません。請求権限、依頼内容、利用目的、委任関係、必要な疎明資料等によっては受任できない場合があります。
戸籍取り寄せ代行サービスの料金
| 戸籍・住民票・附票など1通取得 | 11,000円+実費 |
|---|---|
| 相続等の戸籍収集一式 | 33,000円+実費 |
自治体へ支払う証明書発行手数料、郵送料、定額小為替等の実費は別途必要です。請求内容や請求権限によっては受任できない場合があります。
よくある質問
Q1.本籍は現在住んでいる住所と同じですか?
必ずしも同じではありません。本籍は戸籍上の所在地、住所は現在の生活の本拠を示すもので、それぞれ別の制度です。
Q2.引っ越したら本籍も自動的に変わりますか?
原則として変わりません。住所変更と本籍変更は別の手続です。本籍を変更する場合は転籍届などの戸籍上の手続が必要です。
Q3.筆頭者と世帯主は同じ人ですか?
同じ人とは限りません。筆頭者は戸籍上の概念で、世帯主は住民票上の世帯に関する概念です。
Q4.戸籍の筆頭者が死亡すると、配偶者が新しい筆頭者になりますか?
自動的に変更されるわけではありません。戸籍法では、本籍と筆頭者の氏名で戸籍を表示し、筆頭者が戸籍から除かれた後も同様に表示するとされています。
Q5.本籍が全くわからなくても調べられますか?
現在の住所地で本籍・筆頭者を記載した住民票の写しを取得する方法などがあります。具体的な取得方法は住所地の市区町村で確認してください。
Q6.本籍地が遠方でも行政書士に戸籍取得を依頼できますか?
適法に請求できる範囲で、郵送請求等による戸籍収集を代行できる場合があります。第三者請求等は、請求権限、利用目的、委任関係、必要資料等により受任できない場合があります。
まとめ
本籍は「現在住んでいる住所」ではなく、自分の戸籍が置かれている戸籍上の所在地です。引っ越して住所を変更しても、本籍が自動的に変わるわけではありません。
また、筆頭者は住民票の世帯主とは別の概念で、本籍とともにその戸籍を表示・特定するための重要な情報です。
本籍や筆頭者がわからない場合には、本籍・筆頭者を記載した住民票の写しを取得するなどして確認できます。相続などで過去の本籍地を何か所もたどる必要がある場合には、戸籍、除籍、改製原戸籍を順番に確認しながら収集していきます。
遠方への郵送請求や相続戸籍の収集が負担になる場合には、行政書士へ戸籍取り寄せを依頼することも可能です。
